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改善塾物語2:「開発2課、改善職場になるってよ」~意識を変えることがスタート~

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改善塾

改善活動は目先の仕事優先の意識を変えないとスタートしない

改善への取り組みの必要性はみんな認めるけど、やるとなると躊躇する。「今は、忙しいからあとで」
目の前の仕事を優先して、未来のための取り組みを後回しにするのです。ずっと、後回しです。ヒマになったときは手遅れです。職場や会社の競争力が失われたからヒマになったのです。今から改善しても間に合いません。
未来への取り組みは、日々の中でコツコツ積み上げていかなければなりません。
改善塾の事例記事⇒ ITPro>IT経営>トヨタ流「改善塾」で社内伝道師を育成

<改善塾物語 目次>
1:「改善塾、始まるってよ」
2:「開発2課、改善職場になるってよ」
3:「開発2課、改善を始めたってよ」
4:「開発2課、つまずいたってよ」
5:「開発2課、やり方変えたってよ」
6:「開発2課、生産性測るってよ」
7:「開発2課、改善ミーティングするってよ」
8:「開発2課、生産性の改善してるってよ」
9:「開発2課、効果あるってよ」
10:「改善塾、終わるってよ」

リーダーの抱える問題 ~仕事のできるリーダーの元で部下は育つのか?~

「竹下君、ちょっと」。開発2課のリーダー、竹下はある日、上司である課長から手招きを受けた。
「なんだろう?」と思いながら課長の後に続いて応接室に入った竹下に、課長は要件を切り出した。
「竹下君、残業時間がずっと多い状態が続いているようだけど、大丈夫かい?」。
確かにそれは事実で、竹下自身も自分の残業時間がこの開発2課の中でも、際立って多いのは認識している。
「ええ、まあ。時々寝不足を感じるときもありますけど、体調がどうってことまではないですよ」。
「そうか、それならいいんだが・・・」と課長は言いながらも続けた。
「いやね、君の残業時間が特に多いことを労働組合が問題視しているようで、それで部長が組合から『労働強化じゃないか』と責められたらしいんだ。もちろん部長も僕もそんなつもりは毛頭ないんだが、でも君がいつも多忙なのは僕らも気になっていたんでね」。
自分が多忙な理由は分かりきっている。竹下のほか中堅社員6人、新人2人の計9人から成るこの開発2課では、すべての仕事が竹下の指示のもとで進んでいる。竹下以外のメンバーの開発スキルは決して低くないし、むしろ開発作業自体はメンバーに全幅の信頼をおいている。
しかし開発中のシステムに不具合が見つかったり突然の仕様変更などが発生したりすると、その対応は竹下の判断なしにはまったく進まない。開発作業のスケジューリングなども、竹下がすべて一人で行っている。
かといって竹下は管理職ではない。異常対応や計画立案を一人でこなしながら、自らもエンジニアの一人として開発作業に当たっている。結果的に竹下の負荷は高止まりしたままで、深夜残業は日常茶飯事だ。
もっとも竹下自身は、メンバーから頼りにされること自体に悪い気はしていない。むしろ自分がいなければこの開発2課の仕事が回らないことは、自分のレベルの高さの現れでもあり、そのことに満足しているぐらいだ。
しかし竹下にとっては、尊敬する課長が自分のせいで上から責められたような気がして、申し訳ない感じがした。体調面を気にする課長に竹下は強がって見せたものの、実を言うと先月の健康診断では数値的に体調は悪くなっており、医師からも注意を受けている。
「自分としては多忙を特に気にしていないつもりですが、ただ会社として問題になりうるようなら、何か対応策を考えなければならないですね」。
「それは僕もそう思う。君自身の仕事の負荷を下げる方法を、少し考えてみてくれないか」。
竹下は「分かりました」と答えながらも、心の中では別のことを言っていた。
「そんな方法があったら、とっくにやってますって」。

リーダーの期待 ~興味をもってもらえないとリーダーが改善を邪魔する~

数日後、竹下は再び課長から呼ばれた。社内の改善活動で、この開発2課を改善対象職場の一つにしたいというのである。
竹下は以前同期の友人から、自身の組織が改善対象職場になったときのことを聞いていた。TPS(トヨタ生産方式)に基づいた改善活動を経て、組織の仕事のやり方が変わったといっていたような気がするが、竹下の印象に一番強く残っていたのは、改善とは言っても特にスタート当初は大変だということだ。
改善活動も、改善手法を直接コンサルタントから学ぶ改善塾生ではなく、塾生の指揮のもと職場のリーダーが進めることも知っている。この開発2課が改善対象職場になるならば、そのリーダーはたぶん自分がつとめることになるのだろう。
「これ以上負荷が増えることは勘弁してほしいなあ」と竹下は思いながらも、課長の考えに真っ向から反対するつもりはなかった。自分の残業時間過多で先日、課長に肩身の狭い思いをさせてしまったことへの反省もあるが、それ以上に改善活動を契機にこの開発2課のかかえる問題が、少しでも解決されるかもしれないという期待があったからだ。
その開発2課のかかえる問題とは、言うまでもなく自分が頼られすぎていること。先日課長から自分の負荷を下げる方法を考えるよう言われたばかりだし、自分の体調変化のこともある。それに急な仕様変更への対応など判断が求められる場面で、竹下は周りのメンバーの考えを聞きたくても、メンバーは竹下からの指示を待つばかりで、竹下をサポートしてくれないことにいらだちも感じていた。
その問題が解決に進んでくれるなら、改善活動は竹下にとってむしろウェルカムだ。「一度、ここを担当する改善塾生の大村君に会って、話を聞いてみてくれ」という課長の頼みを、竹下は拒否するはずもなかった。

改善塾生との出会い ~職場を変えたいという思いをもった存在~

開発2課へ向かう改善塾生の大村の足取りは軽やかだった。改善塾生にとって最初の関門は改善対象職場になってくれる組織を見つけることで、大村もいくつかのシステム開発部門にあたったが、いずれも良い顔はしてくれない。見かねたかつての上司が、自分の企画部門を紹介しようかともちかけてきてくれたこともあったが、「いえ、当社はSIベンダーだから、やっぱりシステム開発部門の改善にチャレンジさせてください」と断り、探し続けていた。
その結果、課長レベルでOKをもらえたのが、これから会う竹下のいる開発2課なのである。開発2課で竹下に会った大村は、改善塾がどのようなものか、何のためにやっているかなど一通り説明した。
「見える化」や「5S」など、大村が説明した改善活動にまつわるいくつかのキーワードの中で、竹下が最も興味を持ったのが「ストア管理」だった。それぞれが担当する仕事とその進捗状況を他のメンバーからも見えるようにし、負荷の平準化をはかっていくというストア管理を使えば、メンバーのプロジェクト管理力を高めて、自分に集中している負荷を分散できるのではないかと期待したからだ。
「おもしろそうですね。ぜひやってみましょう」。竹下は開発2課が正式に改善対象職場になることを、快く了承した。課のメンバーにはまだこのことを一言も話していなかったが、その必要はないと考えた。「自分が説明すれば誰も反対しないだろう」と思い込んでいたから。

メンバーの反応 ~まず否定から始まるのが改善の常~

ところが竹下を待ち受けていたのは、開発2課のメンバーの予想もしない反応だった。
「竹下さんの仕事は僕らには無理ですよ。やっぱりプロジェクトは竹下さんに引っ張ってもらわないと」
「竹下さんの後任を作るということですか?誰にするんですか?」
「リーダーが2人になると、指揮系統が複雑になって訳分からなくなります」。
すべてが、改善活動による自分の管理業務移管に反対する意見なのだ。
竹下はメンバーの反論を受けながら、これまでの自分の仕事のやり方を悔いた。竹下は開発2課の仕事をすべて自分で掌握し、すべて自分から指示するスタイルを通してきた。誰かに管理を任せることはせず、メンバー全員を公平に扱うように心がけてきた。しかしそのことが自分を補佐するナンバー2の台頭を阻み、メンバーの自発性を損なっていたようなのである。それでは管理業務を自分から移管していくことに対し、メンバーが拒否反応を示すのも無理はない。
あるメンバーが言った。
「仮に竹下さんの役を部分的に誰かが担うにしても、竹下さんと同じレベルの管理なんてできるわけないんですから、誰がやるにしても今より混乱すると思いますよ、絶対」。
竹下は自分の管理力をメンバーが評価してくれていることをうれしく思いながらも、改善活動着手にあたっていきなり壁にぶち当たったことを感じた。メンバーが今までやったことのない新しい業務をいきなりやれば、その成果は慣れた者に比べて劣ることは当然のこと。それは竹下が行ってきた管理業務に限らず、新しい仕事一般に言えることだ。「今より混乱する」のは、メンバーが言うとおり避けようがない。
明確な答えを返せないまま、その日の会議は終わった。竹下はすぐに大村に連絡を取り、会議でのやりとりをかいつまんで説明した。
「今まで僕が後継者を育ててなかったことが、一番いけなかったことは分かっています」と反省しながら、「でも改善活動で後継者を育てようとすると、少なくとも一時的には管理レベルは低下するのも事実です。どうすればよいのでしょうか」と素直に真情を吐露した。

改善の方針 ~改善活動は人づくり・組織づくりと切り離せない~

「このままでは改善活動は始まらない」そう考えた大村は、次回の改善塾の場でこのことを報告した。
改善塾の師範をつとめるコンサルタントからは、開発2課の改善方針として、2つの案を示された。一つは現在のリーダー主体の体制はそのままで職場の生産性や品質を高める改善。もう一つは今後の部門運営や竹下不在時の場合を考えて、竹下の管理機能を徐々に後継者に移管する改善だ。
大村は後者の改善をすべきと返そうとしたが、その前にコンサルタントから釘を刺された。「後者の場合、一時的に仕事の生産性や品質が低下することは避けられません」というのである。
大村は迷った。確かにいわれてみればそうである。後継者がいきなり竹下と同様の管理機能を果たせるわけもないからだ。しかしただでさえ改善活動に職場が抵抗しているのに、生産性や品質の低下を改善前から言ってしまうと、余計に改善活動は始まらないだろう。
しかしコンサルタントは、大村がどちらの改善方針をとるかを決める必要はないと言った。「課題は改善しない限り、組織の人や仕事が入れ替わっても残り続けます。今の開発2課の方が改善に取り組まないと、後から来る方にその問題を積み残すことになる。組織の将来まで見据えて改善や人づくりの必要性を考えてもらうのが、TPS(トヨタ生産方式)なんです」と言う。
「竹下さんに改善の方針を決めてもらうしかないんだな」。大村はそう考えた。

コンサルの経験「仕事のできるリーダーと改善」

仕事ができ、部下からの信頼のあるリーダーの職場は、リーダーの良い意味での独裁的采配によって、仕事の質も生産性も高度に完成していることがよくあります。このような職場にTPS(トヨタ生産方式)の改善を入れれば、間違いなく質も生産性も一時的に下がることになります。
この優秀なリーダーを中心とした組織運営を続けることを第一にするのであれば、改善活動の導入は見送った方がよいでしょう。しかし、このようなスーパープレーヤー型リーダーをさらに優秀な組織管理者として成長させ、このリーダーのもつ業務遂行上のノウハウを組織内に伝播したいのであれば、このリーダーに他人に成果を出させる組織管理力を身につけさせるために一時的に低下を受け入れることが必要です。
改善はいつも良くなるばかりとは限りません。特に人を成長させる過程では、今まで優秀な人材に任せていた業務をまだ発展過程にある者に任せなければならない事があります。
目先の効果か1年後の効果をねらうのかはっきりと意識して取り組むことが大切です。

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