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改善塾物語3:「開発2課、改善を始めたってよ」~人もやり方も世代交代が必要~

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改善塾

改善活動は、「世代交代を進める場」でもあることを議論する

改善活動は、仕事のやり方をよくするための活動!
しかし、環境変化しています。今までのやり方の問題をつぶすだけでは、環境変化においていかれます。
人も変わります。経験の浅い次の世代にバトンを渡さなければなりません。
力のある人と実績あるやり方で、ずっと、仕事を続けることはできません。
人もやり方も世代交代が必要です。
改善塾の事例記事⇒ ITPro>IT経営>トヨタ流「改善塾」で社内伝道師を育成

<改善塾物語 目次>
1:「改善塾、始まるってよ」
2:「開発2課、改善職場になるってよ」
3:「開発2課、改善を始めたってよ」
4:「開発2課、つまずいたってよ」
5:「開発2課、やり方変えたってよ」
6:「開発2課、生産性測るってよ」
7:「開発2課、改善ミーティングするってよ」
8:「開発2課、生産性の改善してるってよ」
9:「開発2課、効果あるってよ」

打ち合わせ ~世代交代のために払う代償=投資~

1週間後、竹下と大村は改善活動をどう始めるかについて打ち合わせを行った。大村が改善塾から何らかのヒントを持ってくると宣言していたからだ。打ち合わせには、改善活動がいきなりつまずいたと聞いて不安になった課長も加わっている。
大村は竹下に、どうやれば改善活動を始めることができるかを語る前に、まず開発2課を今後どうしていきたいのか、竹下の考えを聞いた。
竹下は言う。
「今、この職場はすごくいい感じでみんな仕事をしています。生産性や品質だって他の職場に絶対に負けない。だからこれを維持し、高めていくべきだと考えています」。
自信たっぷりに語る竹下に、課長が口をはさんだ。
「しかしそんなことしたら、君の負担は今後も減らないどころか、ますます大変になるぞ。君が倒れたらこの職場おしまいだろ」。
「だから今回の改善活動で、私の仕事を後継者に移管していくんじゃないですか」。
大村はその返事を聞き、改善方針について竹下が自分と同じ考えを持っていることに安堵した。竹下がどう判断するか大村は不安だったが、竹下もメンバーへの仕事移管で後継者を育成する必要があると考えているようなのである。
しかし問題はまだある。その改善活動の過程で生産性や品質が一時的に低下する危険性を、どう説明して納得してもらうかだ。大村はせっかくメンバーへの仕事移管を選んだ竹下の意思に水を差しかねないと思いながらも、そのことを正直に言った。
それに対する竹下の反応は、大村の予感どおりだった。竹下は一時的でも管理レベルが低下することを拒絶した。
「職場のメンバーは、『今より混乱する』と言って僕の仕事を移管する改善活動に反対したんです。それを押し切って改善活動を始めた結果、仕事のレベルが一時的にでも落ちてしまうと、メンバーは『ほら見たことか』と改善活動を否定してしまいます」。
大村は粘った。
「もちろんレベルをできるだけ落とさないようにするのがベストです。しかし竹下さんの仕事の進め方を、そのまま後継者にコピーするとは限りません。後継者になられる方には、その方にあった仕事の進め方があるはずですから。新しい方が自分なりの仕事の進め方を作り上げられるように、竹下さんしか知らない情報を素材として出していくのが、メンバーへ仕事を移管し、後継者を育成するための改善活動で、その過程では程度の差こそあれ、一時的にレベルが下がるのは避けられないのです」。
「じゃあどうやって改善活動を始めればいいんです?」竹下は途方にくれたような口調で聞き返す。「職場はただでさえ僕からの業務移管に抵抗を示してるのに、レベルが下がる予定とか言うと、いよいよ改善活動を始めない口実になりますよ」。
「竹下さんだって最初から今のレベルの仕事ができたわけじゃないでしょ。今に至るまでそれなりに時間がかかったはずなんです。後継者にも成長するための時間は必要なんですよ。ただTPS(トヨタ生産方式)は日々の中で気づきを得て、すぐ対策していくので、より短期間で後継者を育成できるのではないかと思います」。
熱くなりかけていた竹下と大村の一方で、課長が冷静な口調で言った。
「竹下君、確かに大村君の言うように後継者の育成過程で、レベルが下がるのは避けられないと思うんだ。それも一種の“投資”と割り切って、改善活動を始めてみようじゃないか」。
むろん竹下は後継者を育成する改善活動に反対なわけじゃない。気になるのは一時的にレベルが下がるのが分かりきっているのに、メンバーが改善活動に協力してくれるかどうかということだ。大村からは「必要性を強く主張すればいいんです」とアドバイスされたが、それだけでみんなが協力してくれるかどうか・・・。

改善活動のスタート ~リーダーが伝えるべきこと~

翌日、竹下は開発2課のメンバーを集めて、改めて自分の業務を移管する改善活動を始めたい旨を伝えた。大村からアドバイスを受けた「必要性」については、自分の残業時間過多が社内的に一部問題になりかけていることや、実際自分の体調も芳しくないことを挙げた。その方が切実に聞こえるだろうと思ったからだ。
メンバーもそこまで言われてしまえば、強く反対はできない。若干の異論は残ったものの、竹下の業務を移管するための改善活動を始めることで話はまとまった。
竹下は、一時的な管理レベルの低下の恐れも話しておかなければと思っていたが、課内の意思がまとまる中で話すタイミングを逸してしまった。「まあいいだろう、そんなに深刻なレベル低下は大村さんが防いでくれるだろうし」。

改善活動はその翌週から始まった。初日のミーティングで、大村は改善活動の進め方や改善ボードの作成方法、そして改善活動のツールについて説明した。
改善ボードには、改善の「目的」「方針」「目標」が掲げられた。目的には「各自がより付加価値の高い仕事ができる人材となる」、方針には「メンバーが竹下の管理業務の一部を引き継ぐ」と定められ、そして目標には「竹下の管理業務の50%を、6カ月間でメンバーに移管する」ことが掲げられた。

ストア管理 ~抱えていた仕事を見える化する~

改善活動のツールには、ストア管理を使うことにした。ストア管理は、もともと竹下が最初に大村の説明の中で食いついたものでもあったが、何より竹下を起点にメンバーへ業務を玉突き的に引き継いでいくには、格好の道具と大村は考えていたからだ。
大村の説明のもとで、ストア管理の立ち上げが始まった。ストア上には担当別に「着手前」「実施中」「保留」「完了」が区分けされ、一つの仕事を1枚のカードに書いた「作業カード」を、現在の状態にあてはまるところに並べていく。作業カードはどんな仕事なのか分かるように、仕事の内容を細かく書けるものにした。
最初の1週間は、この仕事の作業カード化の方に念頭を置いた。竹下の業務の移管をいきなり始める前に、まずはどんな仕事があるかを「見える化」する必要があると考えたからだ。毎朝行う朝会で、竹下やメンバーはそれぞれ自分の仕事をカードに書き出して、ストアに貼り出すようにすることで、この見える化は実現した。
課にどんな仕事がどれだけあるかが分かったところで、次はいよいよ実際の業務の移管だ。竹下は課長と話し合い、竹下の業務を引き継ぐサブリーダーを決めることにした。サブリーダーに順次竹下の業務を移管しながら、サブリーダーの業務を他のメンバーに移管していくことで、管理業務の50%移管という目標を成し遂げようというわけだ。
サブリーダーとして指名されたのは、この開発2課での経験が竹下に次いで長い石原。石原は特に開発スキルが高いというわけではなかったが、各メンバーの仕事について一通り理解があり、メンバーからの信頼も厚いためだ。
石原のサブリーダー着任が決まった翌日から、実際の業務移管が始まった。ストアに並んだ竹下担当の管理業務のカードのうち、一部を竹下でなく石原が取って行うようにするのである。
石原が管理業務のカードを取る量として、最初の週はカードの枚数ベースで5%という目標が設定された。竹下の業務の5%を最初の一週間で移管しようというのである。ただし石原が5%の管理業務を引き継ぐだけでは今度は石原の負荷が高くなるので、石原がもともと担当する作業カードのうち、やはり5%を他のメンバーへ振り分けることも同時に行った。
最初の週、5%という目標はスムーズに達成できた。目立ったトラブルもなく、懸念していた管理レベルの低下もほとんど見られない。
竹下は「ストア管理って、なかなかいいじゃない」と感心した。「1週間で5%移管できるんだから、10週間で目標の50%に到達するぞ。予定より大幅に早く実現するな」と思わずほくそ笑んだ。
しかしその竹下のもくろみは、早くも2週目で崩れることになる。

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