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2.232019
問題解決のテーマ選定の手順とツール・事例
問題解決の目的・対象と道筋を明確にするための具体策
問題解決プロセスのテーマ設定では、その問題の取り巻く環境なども考慮した上で、何のためにその問題解決に取り組むのかという目的を明らかにします。
そして、効果のある問題解決への取り組みのロードマップ(道筋)を明確にします。
では、「家庭学習教材の発送を請け負っている物流会社の誤品出荷」を事例に、どのように目的とロードマップを設定するか見ていきましょう。
<目次>
テーマ設定の事例の解説
Step1:解決したい問題の背景を整理する
Step2:問題解決の目的の検討と設定
Step3:目的を達成するための問題解決のロードマップの設定
テーマ設定の事例の解説
B社は、幼児、小中学生向けの家庭学習教材の発送をX社から受託しています。
教材は、全部で3000種類あります。
受講カリキュラムは、お客様の学年、教育テーマ、学習環境などの違いから200種類以上あり、教材は、この受講カリキュラムによって選択してセットしなければなりません。
発送時のピッキングでは、お客様毎の受講カリキュラムに基づいて、教材を集めて、1つの箱に詰めて発送する多品種混載での作業となっています。
また、納品も昼の12時までに注文のあったものは、当日発送という即納体制を求められています。
慢性的人手不足により、外国人労働者が増える一方でベテランが減って現場の管理が行き届いていないと皆が感じています。
最近、受講カリキュラムの教材とは違う教材を発送してしまう誤品出荷が繰り返し発生していて、この問題解決に取り組むことにしました。
この事例の問題の目的と対象を明確にし、どのような道筋で問題解決に取り組めばいいか考えてみましょう。
Step1:解決したい問題の背景を整理する
目的や対象を設定するためには、問題の背景や取り巻く環境を認識することから始めます。
同じ問題であっても、背景や環境が異なれば対策内容は大きく異なります。
問題の背景や取り巻く環境は、4つの視点で整理していきます。
ミッションの認識
1つ目は、自分たちに課せられているミッションの認識です。職場目標または業務目標と言われるものがミッションです。
B社の物流部門の職場の目標は、「業務効率の20%アップ(省人化)」と「新規顧客の拡大(年間2社の拡大)」で、業務の効率化と新規業務の設計・立上げの両立が期待されています。
省人化と新規顧客向け業務拡大を進めながら誤品出荷防止を進めていくことが求められ、誤品出荷防止のために人も時間も割くことはできない中で問題解決を図らなければなりません。
自分たちが達成しなければならない目標と問題解決は整合したものにしなければならないのは、企業人として当然の責務となります。自分たちのミッションを認識することは、最初にしなければなりません。
顧客要求の認識
2つ目は、顧客要求の認識です。顧客と直接関わりのない仕事の場合は、次工程を顧客とします。
自分たちの仕事からのアウトプットを受け取り、そのアウトプットを使ったり、影響を受けたりする人たちが顧客です。
仕事の目的は顧客に価値を提供することにあり、顧客の要求に応えることにあります。
X社からの要求は、当然の「誤品ゼロ」と「発注当日納品」「顧客部門別発送梱包への多品種混載納品」です。多品種混載の上での即納体制の確立が求められているなかで、誤品出荷策を考えなければなりません。
問題解決は、当然、仕事の中の問題を解決することですから、仕事の目的である顧客の要求を満たすように解決を図らなければなりません。
最近の環境変化の認識
3つ目は、最近の環境変化の認識です。
仕事を取り巻く環境は常に変化していきます。
環境は、仕事をする上での前提条件となります。
問題の多くは、環境変化によって、仕事の前提条件が崩れたり、変化しているにもかかわらず、従来の前提条件で仕事をしようとすることによって発生しています。
B社の最近の環境変化は、慢性的人手不足にある中で、「外国人労働者の比率が3割を超えてきたこと」「3年以上のベテランが1割以下に減ったこと」にあります。
ベテランが減り、作業者教育と現場管理が行き届かない中、外国人の増加によって言語の壁によるコミュニケーションエラーが多発していることが誤品出荷の最大の原因と考えられますが、慢性的な人手不足は、一朝一夕で解決できるものではありません。
ここでは、外国人労働者とベテラン不在を前提として誤品出荷防止を考えていかなければなりません。
問題解決では、環境変化を認識し、最新の仕事の前提条件に合った形で取り組まなければなりません。
自分たちの武器としていたものの認識
最後は、自分たちの武器としていたものの認識です。武器とは、仕事をする上で、自分たちの強みとして使ったり、依存する方法やツール、特徴のことです。
過去の成功体験は、これら武器の上で成り立っているため、武器を使ったり、依存することへのこだわりは強くなります。
ところが、仕事の環境や内容が変わっていく中で、武器が武器として通用しなくなっている場合も少なくありません。
通用しなくなっているにもかかわらず、その武器にこだわることが問題を引き起こしてしまうのです。
B社では、経験と俊敏な対応力を自分たちの強みとしてきました。
しかし、これは経験豊富なベテランがいることを前提とした強みであり、慢性的な人手不足の中、ベテランがいなくなっている状況では、もはや武器となっていません。
問題解決では、陳腐化した武器を捨てることも必要です。
そして、新たな武器を手に入れることにチャレンジするのです。
4つの視点で問題の背景や取り巻く環境の認識を深めることで、自分たちの置かれた状況や会社の方針、顧客の期待に即した目的を設定できるようになるのです。
Step2:問題解決の目的の検討と設定
背景や取り巻く環境を洗い出したら、それを前提として目的を検討します。
問題解決の目的は、問題解決によって職場や仕事が良くなったり、価値が高まったりすることですが、3つの視点で考えると目的がイメージしやすくなります。
変化または成長の視点での目的の検討
1つ目は、変化または成長の視点です。
職場や仕事が良い方向に変化する、または成長するという視点で考えることです。
このとき、先に洗い出した背景や取り巻く環境がヒントを与えてくれます。
「自分たちのミッション」「顧客の要求」などは、自分たちへの期待が示されていますから、その期待に応えるために、何をどのように変化させ、成長すればいいかの考えてみましょう。
B社では、「業務の効率化と新規業務の設計・立上げの両立」「多品種混載の上での即納体制の確立」が求められていることから、変化または成長のポイントは「効率化とミス防止を両立できる業務の設計力と立ち上げ力」をつけることにあると考えられます。
挑戦の視点での目的の検討
2つ目は、挑戦の視点です。今までの自分たちの力ではできないとされていたことをできるように頑張ることが挑戦です。
できないことができれば、今まで得られなかったモノが得られるようになるわけです。
背景や取り巻く環境では、「顧客の要求」「最近の環境変化」がヒントを与えてくれます。
外的要因から自分たちの現在の力では対応できないこと、足りないことが見えてきますから、何に挑戦すればいいのか考えてみましょう。
「多品種混載の上での即納体制の確立」が求められる一方で、「ベテランが減り外国人が増加して作業者の質的変化が著しい」状況にあります。
このような中での挑戦ポイントは、「外国人でもミスなく効率的にできる多品種混載・即納の業務の仕組みづくり」にあると考えられます。
転換または打破の視点での目的の検討
3つ目は、転換または打破の視点です。
自分たちの今までの考え方ややり方を壊し、新たなステージに向かうことです。
新たなステージに入ることで、今まで思いつきもしなかったことが思いつくことができ、新たな価値を創造することができるようになります。
「最近の環境変化」「自分たちが武器としていたもの」がヒントを与えてくれます。
自分たちの常識に囚われ、井の中の蛙化していることに気づき、世の中の常識と自分たちの常識の乖離に気づき、自分たちの何を転換させ、打破しなければならないのか考えてみましょう。
「ベテランが減り外国人が増加して作業者の質的変化が著しい」状況にありにも関わらず、経験豊富なベテランの存在を前提とした「経験と俊敏な対応力を自分たちの強み」と思い込んで仕事をしています。
転換または打破のポイントは、「人の経験に依存した対応力から仕組みによる対応力への転換」にあると考えられます。
問題解決の目的の設定
この3つのポイントを盛り込んだ問題の先にある目的を考え、その目的を実現するために問題解決の対象を何にすべきか考えて設定します。
「繰り返し発生する誤品出荷」の問題解決の目的は、「多品種混載・即納において外国人でも誤品出荷しない仕組みの設計力と立上げ力を身につけて誤品出荷を防止はかる」となり、対象は、誤品出荷に最も関わる「ピッキング業務の設計・立上げ」となります。
目的は、「設計力と立上げ力を身につける」ことにあり、単に誤品出荷防止ではありません。
当然、問題解決の対象は「ピッキング業務」ではなく、「ピッキング業務の設計・立上げ」となります。
Step3:目的を達成するための問題解決のロードマップの設定
設定された目的は、最終段階のめざす姿です。
1回の取り組みで、一足飛びにめざす姿にたどり着けるわけではありません。
本質的な問題を解決する取り組みであれば、数回にわたる問題解決の取り組みが必要となります。
目的の設定では、最終段階の姿だけでなく、そこに至る途中段階のめざす姿を設定することが、効果を確実に手に入れる問題解決につながります。
途中段階の姿を設定することを問題解決のロードマップを示すことを言います。
問題解決のロートマップは、「基盤づくり」、「コアづくり」、「運用体制づくり」の3つの段階があります。
問題解決の基盤づくり
「基盤づくり」の段階では、目的達成の前提となる仕事の仕組みやプロセス、手順の確立、スキルの習得などをめざす取り組みをします。
前提となる仕組みやスキルの上で問題解決をしていくことになりますから、仕組みやスキルが確立できなければ、別の仕組みやスキルを考えなければなりません。
仕組みやスキルが異なれば、当然、問題解決の方法は大きく異なるものになります。
B社の「誤品出荷を防止」の基盤づくりは、「多品種混載・即納業務の設計ができている」というめざす姿で、問題解決の前提条件である多品種混載・即納に対応したピッキング業務のプロセスと手順の設計できるようになることです。
誤品出荷防止は、多品種混載・即納業務におけるものであり、顧客から業務要件がさらに厳しくなった中でも、誤品出荷防止ができるようになるためには、多品種混載・即納業務の設計・立ち上げ力を身につけることが最初に取り組まなければならないことです。
問題解決のコアづくり
「コアづくり」の段階では、目的を達成するための重要な部分=コアを確立することにあります。
問題解決の核心部分であり、最も知恵と工夫が求められます。
問題解決の取り組みを効率的に行うためには、コアをなるべく小さく限定して、取り組みます。コア部分では、失敗が重なり、活動上のロスも多くなりがちです。
ロスを小さくするためには、対象を小さく限定して失敗の影響範囲を少なくします。
失敗を嫌がり、できること、実績あることだけで対策を進めると本質的な問題解決ができず、大きな効果は望めません。
失敗することを前提にして失敗から学んで本質的問題解決をしていくためには、コアを限定して最小のロスで解決できるようにしましょう。
「誤品出荷を防止」のコアづくりは、まさに「誤品出荷しない仕組みの確立」です。
設計されたピッキング業務において誤品出荷しない仕組みの設計と立上げ、確立に向けての改善ができるようにします。
この段階では、まだ外国人のことは考慮せず、多品種混載・即納業務における誤品出荷の仕組みを設計し立ち上げていくことをめざします。
問題解決の運用・体制づくり
最後の「運用体制づくり」の段階は、確立したコアを運用に移していくときの課題を洗い出して解決していくことにあります。
実際の環境、人員、機器やシステム、製品やコンテンツなどによって運用したとき、つくりあげた基盤やコアが正しく機能し、問題を解決するために必要なことを明確にして対策していきます。
「誤品出荷を防止」運用体制づくりは、「外国人を前提とした仕組みの確立」です。
確立した基盤やコアの仕組みを外国人でも迷わず、効率化的にできるサポートの仕組みの設計と立ち上げ、確立に向けての改善ができるようにします。
コア部分の「誤品出荷しないピッキング業務」を外国人でも運用できるように、表示やガイドの整備、教育などを行っていきます。
最後に、目的と目的に至る途中段階のめざす姿をイメージさせる問題解決のロードマップを1枚にまとめます。
1枚に段階的歩みをイメージさせる資料を示し、共有することで、問題解決がブレなくチーム一丸となった取り組みとすることができます。
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