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1.72024
ムダ取り改善でバックオフィス業務の付加価値生産性を高める方法
顧客のムダをなくして価値のある正味作業比率を高める改善とは
効率化至上主義の考え方をあらため、仕事の価値を高める改善を目指すことで、仕事にやりがいを感じながら生産性改善行う進め方とポイントを事例を交えて紹介します。
<目次>
効率化改善から卒業し付加価値改善をめざす
付加価値生産性を高めるムダ取り改善の進め方
管理力の指標となるコミュニケーションの改善
ムダの少ない仕事のスタイルへの転換
やめる改善による業務プロセスのムダとり改善の仕方
効率化改善から卒業し付加価値改善をめざす
仕事の効率化の程度を測る指標に「労働生産性」というモノサシがあります。
これは、1人あたりの付加価値の生産額で、国際比較でも使われています。
この労働生産性で、日本を見てみると、日本の労働生産性は、OECD加盟国38カ国中21位、先進7カ国では断トツのビリという低さです。
改善という言葉が、「KAIZEN」という単語で、英語の辞書に載り、改善と言えば日本と言われるほど、改善に熱心に取り組んでいるにも関わらず、労働生産性は極めて低いです。
日本の労働生産性が低い理由は、様々なものがありますが、改善の仕方も原因の一つと言われています。
効率化改善と言われたとき、皆さんは、どのような改善を思い浮かべるでしょうか。
作業工数を減らす改善をイメージする人が多いと思います。
そして、バックオフィスの業務改善と言えば、真っ先に思い浮かぶのも効率化改善ではないでしょうか。
製造部門とは異なり、バックオフィスは、生み出すモノがないコストセンターと言われ、作業工数を少なくすることを求められます。
私たちは、効率化改善=削減することという考え方で取り組む時間があまりにも長かったため、コストを下げて価格を安くすることが正義で、値上げは悪であると思い込んでいる人が少なくありません。
このような効率化至上主義的な文化の中では、減らすことばかりに目を向けて、仕事の中身には目を向けず、付加価値という視点で仕事の質や魅力を高める方法を考えないのです。
効率という言葉は、本来、限られた工数でどれだけ多くの価値を創出したかを表すものであり、効率を高めることは、生み出す価値を高めることです。
しかし、限られた工数の方を小さくして、相対的に効率を高める方法が主流となり、効率化改善が広く行われています。
そして、このような効率化改善が蔓延してしまったため、仕事の付加価値を理解し、創造することのできる人が著しく減ってしまったという問題もあります。
バックオフィスの改善の花形のRPA
最近のバックオフィスの改善の花形は、RPAです。ロボットによる仕事の自動化です。
今後、AIやRPAがバックオフィスの仕事のあり方を大きく変えていくことは間違いありません。
では、このRPAを自職場に導入したとき、どのような効果があるか思い浮かべてみてください。
どのような効果があるでしょうか。真っ先に浮かぶのが人の工数が減り、省人化されるというものではないでしょうか。確かに工数低減において大きな効果があることは間違いありません。
しかし、そこで終わってしまっては、今までの削減中心の効率化改善と同じです。付加価値に目を向けてください。
RPAの導入によって、高められる付加価値は何でしょうか。
弊社もRPAを導入していますが、大きな効果として感じているのが、仕事品質の向上です。
RPAに作業させ、作業の結果の品質をRPAにチェックさせることで、人が行うよりもはるかに高い品質が保証できるようになりました。
もう一つの効果が新技術の導入スピードのアップです。
夕方、RPAに指示して帰れば、翌朝、仕事は完了しているので、何度でもやり直しができます。
新しい試みを何度も行うことができ、新たな技術を取り入れた仕事が短期間でできるようになったのです。
このように、私たちは、削減中心の効率化改善から脱却できているとは言い難い状況です。
このような削減改善から卒業し、仕事の付加価値を高めて労働生産性を高める改善を目指さなければなりません。
付加価値生産性を高めるムダ取り改善の進め方
では、付加価値生産性を高めるために、どのような改善をすればいいのでしょうか。
付加価値のある仕事を考えて実施すればいいとは簡単にはいきません。その理由は2つあります。
1つは、付加価値ある仕事を新たに取り入れる余裕がないことです。
今の仕事で手一杯のところに、あらたな仕事を追加することはできないのです。
今の仕事を減らして付加価値ある仕事を取り込む時間を生み出さなければなりません。
2つ目は、付加価値ある仕事が創造できないことです。
決められた手順で仕事をすることに慣れ、仕事の価値を考えたこともない人に、いきなり、付加価値のある仕事を考えなさいと言っても無理な話です。
付加価値を創造できる力を育成しなければなりません。
この2つの課題を解決し、付加価値生産性を高めることに有効な改善方法がムダ取り改善です。
今の仕事のムダを見つけてやめる改善で時間を創出し、ムダ追求する経験が価値を創造する力を養うものです。
では、付加価値を高めるためのムダ取り改善とは、どのようなもので、どのように進めていけばいいか紹介しましょう。
ムダに対する視点を変える
バックオフィスのムダ取りによる生産性改善では、「ムダ」に対する考え方に特徴があります。
ここで、ムダの定義を考えてみましょう。
辞書などで調べるとムダとは、役に立たないものとされています。この時、誰にとって役に立たないのかを考えてみましょう。
普通は、自分を基準において、自分の役に立たないものと考えます。
これを顧客に置き換えて、顧客の役に立たないものとして捉えるのが、ムダ取りによる生産改善の考え方です。
自分基準と顧客基準で仕事を見たとき、ムダ取り改善の対象となるものが見えてきます。
まず自分基準=組織視点で仕事を見ます。自分たちに役に立つものは必要と感じ、役に立たないものは必要ないと感じます。
組織視点で仕事を分類すると「組織にとって必要なもの」「組織にとって必要のないもの」に分けることができます。
組織にとって必要のないものは、まさにムダな仕事であり、ムダ取り改善の対象です。
しかし、自分でムダとわかっていることをあえて行う人はいません。ムダであることに気づかず、その仕事を行っている場合はありますが、それはそれほど多くはありません。
次に顧客基準=顧客視点で仕事を見ます。顧客にとって役に立つものは顧客は必要と感じます。
しかし、ここでもう一歩踏み込んで考えてください。お金を払ってでもほしいと思えるものかということです。
私たちは、ビジネスによって顧客に製品・サービスを提供し、その対価としてお金をいただいています。
お金を払うほどの魅力がなければ、製品・サービスは売れないのです。
顧客視点で仕事を見るときは、必要か否かではなく、お金を払う価値があるか否かで考えなければなりません。
つまり、顧客視点での仕事の分類は、「顧客にとって価値のあるもの」「顧客にとって価値のないもの」に分けることです。
組織視点と顧客視点で仕事を分けたとき、この組み合わせから、「組織とって必要なもの」ですが、「顧客にとって価値のないもの」という領域が存在することに気づきます。
今、現在、自分たちが必要と思ってやっている仕事の中に、顧客にとって価値のない仕事が含まれているということです。
この仕事を「顧客のムダ」と言います。
ムダ取り改善のメインターゲットは、この顧客のムダです。
価値のない仕事はやめる
顧客のムダを無くす改善は、一言で言うと「その仕事をやめる」ということです。
効率よく短い時間で行うというものではありません。価値がないのであるから、たとえ短い時間であってもその仕事を行うことはムダです。
ムダ取り改善は、価値のある仕事とない仕事に分けて、価値のない仕事をやめる改善ですが、仕事は、単純に価値がある、ないで分類できません。
その仕事の中の一部は価値がありますが、その他は価値がないというように、価値のあるものとないものは混ざり込んでいることがほとんどです。
そこで、顧客にとって価値のある仕事を多く含むものを正味の仕事とし、価値がないものが多いものを非正味の仕事に分類します。
そして、非正味の仕事の中に含まれている顧客のムダの部分を取り出して、やめる改善をします。
まず、正味・非正味の分類基準を作成して、その基準に従って、現在の仕事を棚卸しして、やめる改善の対象をリストアップします。
非正味の仕事は、全仕事の60%~90%になることがほとんどです。
そのくらい改善の対象はたくさんあります。
次に、非正味の中から、やめる改善の対象とするムダな仕事を対象に、それを取り出してやめる改善を開始します。
非正味の中のムダを取る改善を繰り返すことで、非正味作業は小さくなり、必要な工数も減っていきます。
付加価値を増やすことをめざす
ここで、終わってしまっては今までの削減中心の効率化改善と変わりません。
ムダ取りによる生産性改善は、さらに先に進めて、付加価値を増やすことをめざす。
ムダ取りによって、減った工数分、新たな顧客にとって価値のある仕事を創造し、その仕事を取り込むことによって、仕事全体の付加価値生産性を高めるのです。
最も難しいのが、価値ある仕事の創造ですが、ここでムダ取り改善が活きてきます。
正味・非正味の分類基準を作成するときに、顧客のムダが何であるか明確にしなければなりません。
しかし、顧客のムダを明確にするためは、顧客の価値がわかってなければ、それはできません。
正味・非正味の分類で、顧客の価値に目を向けて、考え、定義した経験が、顧客にとって価値ある仕事を創造するときに役に立つのです。
管理力の指標となるコミュニケーションの改善
では、実際のムダ取り改善は、どのようなものなのか、バックオフィスの仕事における最大のムダの温床といえるコミュニケーションにおけるムダ取り改善の仕方を紹介しましょう。
バックオフィスの仕事では、その特性上、会議や打ち合わせ、連絡、相談などのコミュニケーションは多くなります。
このコミュニケーションに多くの顧客のムダが潜んでいます。
みなさんは、コミュニケーションをしっかりとりなさいと指導されてきたのではないでしょうか。
コミュニケーションを活発にして、多い方が良いという考え方です。
しかし、私たちはコミュニケーションが多いことは悪いことである考えています。
それは、コミニケーションの内訳を見ると、その理由がわかります。
コミュニケーションの内訳
コミュニケーションは、「報告・連絡」「確認・調整」「トラブル対応」がほとんど占めます。
それぞれの理由を考えてみましょう。
なぜ、報告・連絡が必要なのか。それは、仕事の実施プロセスの進捗が見えないことにあります。
見えないから報告・連絡を求め、報告・連絡が来るまで、その仕事は担当者任せのブラックボックス状態となっています。
問題が発生しても報告・連絡が来るまで、管理者は問題が発生していることを知らず、報告・連絡が来たときには手遅れとなっていることもあります。
報告・連絡は、仕事の見える化でできていて、リアルタイムに仕事の状況が把握できていれば必要のないコミュニケーションです。
つまり、仕事の管理の仕組みが弱いことが、報告・連絡のコミュニケーションを増やしていることになります。
確認・調整が必要な理由も考えてみましょう。
人によって仕事の目的や成果物に対する定義や条件、特性が異なり、仕事を進めていく内にそのズレが大きくなり、それを解消するために確認・調整を行います。
最初に仕事の目的や成果物の定義や条件、特性を明確にし、共有できていれば、ズレの発生はなく、確認・調整のコミュニケーションは必要ないことになります。
つまり、仕事の計画・段取りのまずさが、確認・調整のコミュニケーションを増やしていることになります。
トラブル対応は、言うまでもなく、問題の未然防止の取り組みができていれば、不要なコミュニケーションです。
このように、コミュニケーションは、仕事の計画・段取り・管理、改善の強さに反比例して多くなります。
つまり、コミュニケーションが多い組織は、仕事の管理・改善力が低いと言えるのです。
コミュニケーションは、仕事の管理・改善力の高さを表す指標となります。
仕事の管理・改善力を高める改善を行い、コミュニケーションの回数を減らす取り組みをしましょう。
コミュニケーション改善の事例
では、コミュニケーションを減らす改善の例を紹介しましょう。
議題理由調査シートを使って、会議議題の価値を評価し、改善する例です。
最初に、会議の価値について考え、定義し、それを評価するための議題理由シートを作成します。
事例の場合は、会議の価値は、異なる知識や経験をぶつけ合い1人では出せないアイディアをだすために議論すること、対処方法が複数あり、関連部門が協力し合うと必要のある異常に対しての対応策を作成することにしました。
会議議題を取り上げた理由を正常、異常で分けて、異常だけを対象としているか評価し改善策を考えます。
正常のものは会議の中で報告をやめて報告書の提出で済ませます。
正常は、議論の対象とはなりえないので、会議で扱うものではないのです。
続いて、場の状態で分類して、複数の者による議論ができているか評価し、改善策を考えます。
読み上げているものは、読み上げをやめて資料提出だけで済ませます。
1対1での話になっているものは、会議対象から外し、当事者同士で解決させます。
このシートで議題の棚卸しを行い、会議で扱う価値のない議題をやめる改善を行い、会議の生産性を高めます。
コミュニケーションには、業務管理の問題が集約されていると言っても過言ではありません。
コミュニケーションを減らすことを目標とし、業務管理力を高める改善をしましょう。
ムダの少ない仕事のスタイルへの転換
ムダム取り改善は、価値のないムダな仕事を見つけて潰す改善ばかりではありません。
ムダな仕事の発生そのものを減らす改善もあります。
ムダな仕事が発生しやすい場面は、新製品の生産準備、工程変更、システムの更新などルーチン業務でない企画・準備・変更などの仕事です。
それらの仕事では想定外の問題が発生しやすく、その対応という形でムダな仕事が発生します。
この想定外の問題は、仕事のスタイルをリーンスタイルに変えることで大幅に減らすことができます。
想定外の問題は、プロセスの後半にいくほど発生数が増える傾向にあります。
プロセスの前半は、担当者の机上で考えている段階で、担当者の想定範囲で仕事が進んでいきます。
しかし、後半は、実際の環境や他者の関わりが増え、担当者の知識や経験ではわからなかった問題が発生し、担当者にとっては、想定外の問題となります。
リーンスタイルは、これまでのプロセス順だった仕事の仕方を、仕事の一部を一気通貫で最後まで行うスタイルにしたものです。
仕事の一部を一気通貫で最後まで行うことで、実際の環境や他者の関わりを進め、想定外の問題を先行して発生させるのです。その想定外の問題の経験から、残りの仕事における想定外の問題を事前に洗い出し、対策します。
これを繰り返すことで、仕事全体の想定外の問題の発生数を減らすことができます。
このように仕事の一部を先行して一気通貫で行うリーンスタイルに変えることで、経験知を増やし、仕事の付加価値生産性を高めることかできるようになります。
やめる改善による業務プロセスのムダとり改善の仕方
ムダ取り改善の基本は、やめる改善でありますが、ここでは、どのようにすればやめられるのか、その改善アプローチを紹介します。
やめる改善の対象は、プロセス、タスク、動作など様々なものがありますが、やめたことを実感できるのは、プロセスを対象とした改善です。
今まで行っていたプロセスをやらなくても成り立つようにプロセスを変えるのが、プロセスを対象としたやめる改善となります。
プロセスを対象としたやめる改善は、プロセスの統合とプロセスの連結によって行うことができます。
その2つの改善方法を紹介します。
プロセスの統合によるやめる改善
プロセスの統合では、重複したプロセス=同じ仕事内容のものを統合することによって、片方のプロセスをやめる改善です。
例えば、メーニュースの配信と新商品のダイレクトメールの送付は、共に配信先名簿の管理をしています。
この重複している配信先名簿の管理を一元化することで、それぞれが行っていた名簿管理をやめることができます。
改善のポイントは、重複プロセス=同じ仕事内容を探すことですが、部門を超えた業務で探すことと、仕事内容の重複で探すのではなく、仕事の目的の重複で探すと、重複プロセスが見つけやすくなります。
プロセスの連結によるやめる改善
プロセスの連結は、前後のプロセスを連結して1つにすることで、一部のプロセスをやめる改善です。
例えば、新商品のダイレクトメールでは、「パンフレットの印刷」、「宛名ラベルの印刷」、「パンフレットの封入とラベル貼り」の3つのプロセスを、パンフレットの印刷時に宛先も同時に行うオンデマンドにすることで一つプロセスにすることができます。
改善ポイントは、何か入れたり、合わせたりするプロセスがあれば、それを生成するプロセスを合体して一緒にできないかと考えると連結できるプロセスを見いだすことができます。
やめる改善では、単純にその仕事をやめることはできません。
統合や連結の視点で改善方法を考えることで、片方または一部をやめても成り立つ仕事のやり方が見えてきます。
様々な視点で、やめる方法を考えてみましょう。
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