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派遣社員のキャリアコンサルティングとは~実施手順・マニュアルと事例

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キャリア形成

キャリアコンサルティングの基礎と実施手順

改正派遣法では、希望するすべての派遣社員に対するキャリア・コンサルティングが義務づけられています。
キャリアコンサルティングとは、どのようなもので、どのように行えばいいのでしょうか。
キャリアコンサルティングの9つのポイントについて事例を交えて解説します。

 1.キャリア形成とその支援の必要性
 2.キャリア形成の6ステップ
 3.キャリアコンサルティングとは
 4.キャリアコンサルティングを行う相談員
 5.キャリアコンサルティングの5つのポイント
 6.キャリアコンサルティングの相談時の7つの留意点
 7.キャリアコンサルティングの相談スタイル
 8.キャリアコンサルティングの流れ・手順
 9.キャリアシートの活用
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キャリア形成とその支援の必要性

雇用環境の変化

労働者の雇用を取り巻く環境は、高齢化社会の進展、インターネットや人工知能などの ICT等の技術革新の進展が、職業生活が長期化や仕事の内容及びその遂行方法・手段に大きな変化をもたらしています。
就業意識の変化が進む中、労働力の需要構造の変化と相まって派遣労働者やパートタイム労働者等へと就業形態が多様化しています。
就労意識の変化、高齢化の影響、企業の雇用システムの変化などによって、労働移動の増加が見込まれ、労働者が、主体的に個々の希望や適性・能力に応じて、生涯を通じたキャリア形成を行い、企業内外で通用する職業能力を高めることが重要となっています。

キャリア形成に対する企業の責務と取り組み

企業では、キャリア形成と職業能力向上に対する積極的な支援を行う制度の構築と実践が求められています。
企業が行うキャリア形成支援
企業は、社員の求める「個人のキャリア形成のニーズ」と、企業が必要とする「企業が従業員に求めるニーズ」との、調和をはからなければなりません。
そして、組織的、計画的かつ継続的な、次のような取り組みをしなければなりません。
社員の希望や適性・能力などを実現するために、仕事、職場、勤務形態、勤務場所、処遇などについて、社員の選択の幅が拡大するような雇用管理の仕組みを導入していきます。
具体的なものとして、自己申告、社内公募、勤務地限定、フレックスタイム、年俸制などの諸制度があります。
企業と社員の相互選択を有効に機能させるためには、社員も自分のキャリアを選択し、伸ばしていく意識と能力をもつ努力をしなければなりません。
年齢、学歴、採用年次別などによる一括管理から、一人ひとりの、個性化、多様化に応じた個別管理の雇用管理の仕組みづくりを進めます。
具体的なものとしては、専門職化、目標面接、コース別採用、職務情報の提供等があります。
生涯を通じた学習意欲の高まりなどにより、多くの労働者が各種の教育訓練機関を利用して自己啓発を行う傾向が高まっていますが、企業としても、このような社員に対する援助や助成を行っていきます。
具体的なものとしては、自己啓発のための勤務時間の配慮、学費等の助成、教育訓練休暇、生涯設計プログラムの実施などがあります。
社員の主体的な取り組みを支援するためには、以上のような雇用管理上の施策のほか、社員が自ら、キャリア形成の方向やその実現のための具体的手段を考えることを支援する、情報提供、助言・相談等も必要不可欠です。
キャリア形成の記事⇒派遣社員のキャリア形成支援制度とは~構築の進め方とマニュアル・事例
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キャリア形成の6ステップ

キャリア形成は、次の6ステップを踏んでいきます。

1.自己の理解

職業・職務選択、キャリア形成をしようとしている「自分自身」の理解を深めます。

2.仕事の理解

選択しようとしている職業・職務、またその職業や職務に就くためのキャリア・パスの種類と内容について理解します。

3.啓発的経験

職業や職務のキャリア選択や意思決定の前に、それら職業や職務の実際について体験して理解を深めます。

4.キャリア選択に係る意思決定

自己の理解、仕事の理解、啓発的経験の過程と理解内容を踏まえて、客観的かつ合理的に、めざす職業や職務へのキャリアアップを選択し、キャリア形成に向けた取り組みを開始します。

5.方策の実行

めざす職業や職務に就くためのキャリア形成に向けて、能力開発計画を立案し、実行します。

6.仕事への適応

めざす職業や職務における適応力を高めます。
そして、次のキャリア形成にステップアップしていきます。
キャリア形成は、職業生涯の節目、節目で実施され 、個人のキャリア形成がレベルアップや範囲の広がりを伴いながらスパイラルアップしながら進んでいきます。
人生の中でキャリア形成を何回か繰り返しながら、職業的な発達を遂げていくのです。
数ある職業選択肢の中から自分の適性・能力や希望にあった領域を絞り込みながら、その専門性が少しずつ深められていきます。
キャリア形成支援は、これら6ステップの段階に応じたサポートを行っていきます。

キャリアコンサルティングとは

キャリア形成支援の1つが、キャリアコンサルティングです。
改正派遣法では、労働者の職業生活の設計に関する相談その他の援助を行うこととされています。

キャリア形成6ステップと情報提供、助言・相談

社員が自ら、キャリア形成の方向やその実現のための具体的手段を考えることを支援するために、情報提供、助言・相談を行うことです。
キャリアコンサルティングは、キャリア形成の6ステップに応じた情報提供、助言・相談を行っていきます。
自己の理解のステップでは、特に、キャリア指向性の明確化の支援が重要なものとなります。
仕事の理解では、仕事情報の収集・整理方法の紹介とサポートを行います。
啓発的経験では、職業経験の棚卸しの支援と啓発的経験を得る方法の紹介やサポートを行います。
キャリア選択に係る意思決定では、選択のための検討事項の明確化と検討、選択方法の紹介とサポートを行います。
方策の実行では、キャリアアップの目標設定と能力開発プランの立案、実施のサポートをします。
仕事への適応では、温かく見守り、継続的にキャリア形成していく土壌づくりを行います。

キャリアコンサルティングのマニュアルの整備

登録または更新時に提出する「キャリア形成支援制度に関する計画書」には、キャリアコンサルティングに関するマニュアル等の有無が問われています。
キャリアコンサルティングの窓口の設置、担当者の配置、実施手順などを規定したマニュアルをもつことが実質的に求められています。

キャリアコンサルティングの内容

キャリアコンサルティングは、社員との十分な話し合いの上で成り立ちます。
キャリアコンサルティングとは、社員のキャリアを十分に把握し、それを明確にするとともに、その能力を正確に評価した上で、企業や業界のニーズと社員の適性・能力・希望等を照合することにより、社員の職業選択のためのキャリア形成の具体的方向と、職業生活の設計、職業能力の開発・向上を社員自ら行うことを支援するために、情報提供、助言・相談の方針を行うことです。
キャリアコンサルティングの目的は、社員が、自分の適性や能力、関心に気づき、自己理解を深め、社会や企業内にある仕事について理解し、自分に合った仕事を主体的に選択できるようになることにあります。
キャリアコンサルティングの内容
キャリアコンサルティングの実施手順の解説動画をYoutubeで公開中!

キャリアコンサルティングを行うキャリア相談員

キャリアコンサルティングに必要なスキル

キャリアコンサルティングを行う人には、次のような力が必要です。
面談スキルやカウンセリングスキル
社員の思いや考え、希望、不安などを引き出す力です。
「自己理解」を支援する力
社員が自分自身を見つめ、冷静的かつ客観的に自分を棚卸しし、整理し、認識することをサポートする力です。
「仕事の理解」を支援する力
社員が興味を持ち、めざそうとしている職業や職務など「仕事」に関する情報と、それを収集し、理解することをサポートする力です。
職業能力開発を支援する力
社員がめざす職業や職務に向けたキャリアアップのために必要な職業能力開発の種類や方法などの情報提供と、その実施に向けた取り組みをサポートする力です。

キャリアコンサルティングに必要な資格と経験・知見

よく、「キャリアコンサルティングを行うのに資格が必要か」という質問が寄せられます。
キャリアコンサルティングに必要な資格
資格には、「キャリアコンサルタント」という国家資格、「キャリアコンサルティング技能士」という国家検定があります。
これらは、いずれも弁護士や税理士などのような「業務独占資格」ではありません。
相応のスキルがあることを証明する資格のようなものです。
キャリアコンサルティングを行うのに、資格は必要ありません。
誰でもできます。ただし、キャリアコンサルティングを行う力があることが求められます。
これら資格があれば、力があることを公的に認められていることになります。
資格がない場合、キャリアコンサルティングを行う力があるか、どのように判断すればよいでしょうか。
力の有無は、相応の経験や知見があるかで判断します。
具体的な目安としては、職業訓練の指導や計画・運営など職業能力開発推進経験が3年以上ある、または、採用・配置・教育などの人事経験が4年以上ある、といったものとなります。
知識面のスキルを補うために、体系立てたキャリアコンサルティング教育を受けることが望ましいです。
これら経験者がいない場合は、派遣会社で職業選択や相談経験のある営業職をあてます。
キャリアコンサルティングに必要なスキル

キャリアコンサルティングを行うキャリア相談員の教育例

キャリアコンサルティングを行うキャリア相談員(除く国家資格を有する者)には、以下のような講座の研修を行います。テストの合格を受講修了の判定としたりします。
①キャリアコンサルティングの基礎(厚生労働書発表のキャリア・コンサルティング技法等に関する調査研究報告書に沿った内容)
②キャリアコンサルティングの実施手順(厚生労働書発表のキャリア・コンサルティング技法等に関する調査研究報告書に沿った内容)
③カウンセリングマインドの基本
④能力を引き出すコーチングのための質問力
⑤能力を引き出すコーチングのための承認

キャリアコンサルティングの5つのポイント

育てるための相談

コンサルティングの目的は、「育てるための相談」であり、社員本人の成長する潜在的な力を信頼し、本人が主体的に行うキャリア形成を側面的に支援することに徹します。

具体的な目標決定の重視

職業・職務の選択、今後のキャリア形成の方向の決定、手段の決定など具体的な目標決定を重視します。

システマティックであること

相談やキャリア選択のプロセスがシステマティックに進められるようにします。
自己理解、仕事の理解、啓発的経験、キャリア選択にかかる意思決定、方策の実行、職務への適応といった各ステップを明確にしながら相談を進め、相談が現在どの時点にあるのかを社員と確認しながら進めます。

社会的資源の活用

企業内だけでなく、他の社会的な資源の積極的活用を促します。
そのためには、キャリアコンサルティングを行う者が、各種行政機関や制度で行われている施策や公開情報を知るとともに、それら機関のサービスの活用をはかっていくことが必要となります。 

安心して積極的に相談できる環境づくり

社員が安心して、また、積極的に相談できるような環境整備を行うことも重要です。
企業側に知られたくない事情、例えば、昇進などに影響する個人的状況、職場の中での不満等についての守秘義務を守らなければなりません。 キャリアコンサルティングの結果がどのように利用されるのかについて明確なルールを決めておくこと、必要に応じて企業側から一歩距離を置いた外部の専門家の活用も検討することなどの配慮も必要です。 キャリアコンサルティングの実施時期も企業内のイベントや業務負荷などを考慮に入れて決める必要があります。

キャリアコンサルティングの相談時の7つの留意点

キャリアコンサルティングの相談時には、以下の点について留意しましょう。

1.社員との間の信頼関係の確立

相談は静かで、友好的な雰囲気の中で、「暖かい信頼に満ちた関係」をつくり、維持することが大切です。
適切な面談手法、カウンセリング手法を選択し、活用しましょう。

2.従業員の期待についての認識

社員は、様々なことをキャリアコンサルティングに期待します。
相談の開始に当たっては、社員が何を求めているのか、期待しているか、十分に理解するように話を聞きましょう。
しかし、キャリア形成は、社員自らが主体的に行うことです。
あくまでも援助する立場で臨み、できないことを約束してはいけません。

3.社員の感情についての認識

相談において、感情は、重要な役割を果たします。
社員が何をどのように感じているのか、思っているのかについて、注意を払いましょう。

4.社員自身の責任意識の形成

社員自身がキャリアコンサルティングの過程に責任を持つようにさせます。
相談は、社員の主体性を重視した共同作業です。
次回までにお互いにやることを「約束」し、宿題を課すことも必要です。
自分が行動しなければ、進んでいかないことの認識を深めさせましょう。

5.相談をゴールに向かって終結させる

キャリアコンサルティングは、キャリア形成のゴールに向かう取り組みです。
毎回、愚痴をこぼす場となって、ダラダラと続けるようなことにならないように、終結に向けててきぱきと進めるようにします。
通常、3回程度、1回約40分から50分程度の面談で終了します。
終了に当たっては、進展したこと、目標、同意したことを相互で確認しましょう。

6.相談の成果を評価する

相談の成果について、社員、キャリアコンサルティングを行った者、同僚や上級者によって評価し、ふり返り、次のキャリアコンサルティングの改善につなげましょう。

7.プライバシーの保持

キャリアコンサルティングを通じて知り得た個人の秘密やプライバシーは、第三者に一切、洩らしてはなりません。
キャリア選択や能力開発のために第三者に知らせる必要がある場合は、社員本人の承諾を得て行わなければなりません。

キャリアコンサルティングの相談スタイル

キャリアコンサルティングでは、相談者である社員の状況に応じて、相談スタイルを使い分けます。
キャリアコンサルティング相談スタイル

ガイダンス型相談

ガイダンス型は、自分でキャリアプランを作成できる人が対象となります。
キャリアシートによるキャリア形成ステップを踏んだキャリアプランの作成方法を説明します。
通常、面談回数は1回で、別途、必要に応じてフォロー面談を行います。

アドバイス型相談

アドバイス型は、キャリアプランの作成のサポートを必要とする人が対象です。
キャリアシートによるキャリア形成ステップを踏んだキャリアプランの作成について、ステップ・バイ・ステップでアドバイスを繰り返す面談を行います。
通常、面談回数は3回で、別途、必要に応じてフォロー面談を行います。

カウンセリング型相談

カウンセリング型は、キャリア形成のための取り組みを阻害する問題を抱えている人が対象となります。
自己の理解、仕事の理解、意思決定などを行ううえで、それを阻害する悩みや環境などの問題を共に解決するためのカウンセリングを繰り返すものです。
カウンセリングの専門的知識と経験を持った人が対応します。
心的問題の程度が著しい場合は、専門のカウンセリング、または心療内科を紹介するようにします。

キャリアコンサルティングの流れ・手順

アドバイス型のキャリアコンサルティングは、3回の面談を行います。
キャリアコンサルティングの流れ

1回目の面談:自己理解

1回目の面談は、自己の理解をテーマとした相談を行います。
相談前の事前準備として、キャリアシートに、本人の属性情報の整理と記入、仕事や職業における夢や興味、幸せに感じることを整理するように社員に通知し、当日、持参させます。
面談では、主に自己の理解を支援する相談を行います。

2回目の面談:仕事の理解

2回目の面談のテーマは、仕事の理解です。
面談までに、自己理解の再検討と確定、興味・価値を感じる仕事の洗い出しと情報の収集を宿題とします。
面談では、仕事の理解とキャリア選択を支援する相談をします。

3回目の面談:能力開発プラン

3回目の面談テーマは、能力開発プランです。
面談までに、仕事の理解の再検討と確定、キャリア選択の意思決定、能力開発方法の情報収集をさせます。
面談では、能力開発プランの立案をサポートします。

面談の終了

3回の面談でキャリアコンサルティングは終了します。
3回目の面談後は、キャリア選択の確定、能力開発プランの再検討と確定、立案した能力開発プランに基づいたキャリアアップへの取り組みを開始させましょう。
必要に応じて、フォローアップ面談を行います。

キャリアシートの活用

キャリアコンサルティングでは、社員が、自らをふり返り、今後のキャリア選択の方向性やその実現をはかるための手段・方法を整理するためのキャリアシートを活用することが効果的です。
キャリアシート事例

キャリアシート活用の目的

キャリアシートを活用する目的は、
自らを見つめ直す作業とすること、
キャリア選択に必要な情報の収集、整理、保存をすること、
相談の流れをつくりキャリアコンサルティングを体系立てたプロセスで行われるようにすることです。

キャリアシートの構成

キャリアシートの構成は、
本人の氏名、年齢、性別などの属性に関する部分、
自己理解に関する部分、
仕事の理解に関する部分、
キャリア選択の意思決定に関する部分、
目標と取り組み計画に関する部分があります。

キャリアシートの記入と管理

キャリアシートは、キャリアコンサルティングにおいて、助言を受けながら本人が自ら記入します。
キャリアシートに記載するために収集した資料などは、キャリアシートとセットで管理します。
企業側は、本人の了解を得て、写しを保管しておきます。

相談の過程の見える化とふり返り

より良いキャリアコンサルティングを行うためには、相談やキャリア選択のプロセスがシステマティックに進められる必要があります。
そのためには、相談の過程で、自らをふり返り、今後のキャリア選択の方向性や、その実現をはかるための「キャリアパスの明確化」、「職業能力開発」等を整理するために、キャリアシートの作成と活用は不可欠です。

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